香りの名称についての商標
化粧品、入浴剤、芳香剤などの商品には、消費者が魅力的に感じるような「○○の香り」という香りの名称が頻繁に使用され、それが商標登録出願されることも多々あります。
しかし、「レモンの香り」や「バラの香り」では、商品の品質等を表示することになってしまい、これに商標権を付与して一私人に独占させることは適当ではないことから、商標登録をすることはできないことになっています(商標法第3条1項3号)。
そこで企業は、①消費者に魅力が伝わる香りの名称であり、かつ、②商品の品質等を具体的に表示するものではない、という2つの条件を満たす、様々な「○○の香り」を考えて、商標登録出願しているようです。
ご参考までに、下記に、「登録となった商標」 と 「拒絶となった商標」 を掲載し、併せて、そのポイントを解説いたします。
登録となった商標
(1)商標:「ピンクグレープフルーツ&フラワーミントの香り」(第5688243号)
商品:第3類「口臭用消臭剤,動物用防臭剤」等
(2)商標:「クリーミーローズの香り」(第5691832号)
商品:第3類「浴用化粧料」
(3)商標:「気分さわやかグリーンフォレストの香り」(第5701303号)
商品:第3類「身体用消臭剤,身体用防臭剤」等
登録となった商標を見てみると、なんとなく、香りの抽象的なイメージはできるのではないでしょうか。
(1)なら爽やかな香り、(2)なら濃厚なバラの香り、(3)なら森林浴の清々しい香り…などです。
これは、前記①の条件(消費者に魅力が伝わる香りの名称)を満たします。
しかし、一方で、(1)の「フラワーミント」や(2)の「クリーミーローズ」、(3)の「グリーンフォレスト」が、実際にどのような香りなのかを、具体的に特定することはできません。
前記イメージも、あくまで私のイメージであって、見る人にとって想起する香りのイメージは異なります。
これが、商標登録可能な、前記②の条件(商品の品質等を具体的に表示するものではない)を満たしている、ということです。よって、これらは商標登録されました。
拒絶となった商標
(1)商標:「フレッシュベリーの香り」(不服2006-12095)
商品:第3類「身体用防臭剤,身体用消臭剤」等
(2)商標:「こころ安らぐキンモクセイの香り」(不服2014-11133)
商品:第3類「洗濯用柔軟剤,口臭用消臭剤」等
拒絶となった商標を見てみると、「フレッシュベリー」の文字からは「新鮮なベリー」、「キンモクセイ」の文字からは「金木犀(キンモクセイ)」と、前記「登録となった商標」に比べ、より直接的かつ具体的に、香りが想起されます。
これが、前記②の条件(商品の品質等を具体的に表示するものではない)という条件を満たさず、商標登録できなかったものと考えられます。
もちろん、これらは、あくまで過去の登録例・審決例であり、個々の商標ごとにより、判断は異なります。
審査時に、当該商標「○○の香り」が、その指定商品について、どれくらい使用されているか、などの事情も勘案されます。
「○○の香り」の商標を出願される際は、ぜひ、参考にしてみてください。